高血圧症

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高血圧症とは

　高血圧症とは、血管にかかる圧力が継続的に高い状態を指します。日本では成人の約3人に1人が高血圧とされており、「サイレントキラー」とも呼ばれる生活習慣病の代表的な疾患です。発症には遺伝因子と複数の環境因子（過剰な塩分摂取、肥満、運動不足、過度の飲酒、喫煙、ストレスなど）が関係しており、両者が複合することで高血圧症を発症します。

高血圧の診断は、複数回の血圧測定によって行われます。

診察室血圧測定：医療機関での標準的な測定
家庭血圧測定：自宅での定期的な測定
24時間血圧測定：携帯型血圧計による連続測定

医療機関で計測したときに上の血圧が140 mmHg以上、下の血圧が90 mmHg以上になる疾患です。自宅で計測する場合は、上の血圧が135 mmHg以上、下の血圧が85 mmHg以上であると高血圧症と定義されます。自宅での計測の基準値が低いのは、自宅のほうが病院で計測するよりリラックスでき、血圧が低くなるからです。

医療機関での測定値は以下のように分類されます。

分類	収縮期血圧 (mmHg)		拡張期血圧 (mmHg)	特徴
正常血圧	<120	かつ	<80	理想的な血圧値
正常高値	120-129	かつ	<80	生活習慣の見直しが推奨
高値血圧	130-139	または	80-89	積極的な生活習慣改善が必要
Ⅰ度高血圧	140-159	または	90-99	軽症高血圧・治療適応
Ⅱ度高血圧	160-179	または	100-109	中等症高血圧・積極的治療
Ⅲ度高血圧	≥180	または	≥110	重症高血圧・緊急治療

高血圧症の症状


高血圧は「サイレントキラー」と呼ばれるように、初期段階では自覚症状がほとんどありません。しかし、進行すると以下のような症状が現れることがあります。

   ・頭痛（特に朝方の頭痛）
   ・めまい、立ちくらみ
   ・肩こり、首の張り
   ・動悸、息切れ
   ・耳鳴り
   ・鼻血が出やすい
   ・疲労感、倦怠感

高血圧症は、心臓、眼底、脳、大動脈、腎臓など他の臓器に合併症を起こす可能性があります。特に脳卒中の罹患率、死亡率は血圧と強く関係しており、適切な血圧のコントロールが重要です。

治療

高血圧の治療は、患者さんの病状やリスクに応じておこないます。

1. 生活習慣の改善

・食事療法（減塩、DASH食）
・運動療法（有酸素運動を中心に）
・体重管理
・禁煙、節酒
・ストレス管理

2. 薬物療法
生活習慣の改善だけでは血圧の管理が困難な場合にお薬による治療をします。

・ACE阻害薬：血管を拡張させる
・ARB（アンジオテンシンII受容体拮抗薬）：血管の収縮を抑制
・カルシウム拮抗薬：血管を拡張させる
・利尿薬：体内の余分な水分・塩分を排出
・β遮断薬：心拍数を抑制

　　　ほかにも新しい作用機序のお薬があります。

　　　患者さんの基礎疾患などに合わせて適切なお薬を選択します。

3. 定期的な管理

・定期的な血圧測定
・血液検査（腎機能、脂質等）
・心電図検査
・眼底検査

よくある質問

Q1: 高血圧は完治しますか？
A: 高血圧は基本的に慢性疾患であり、完治は困難です。しかし、適切な治療と生活習慣の改善により、血圧を正常範囲に保つことは可能です。継続的な管理が重要です。

Q2: 薬を飲み始めたら一生続けなければいけませんか？
A: 必ずしもそうではありません。生活習慣の改善により血圧が安定すれば、医師の判断で薬の減量や中止が可能な場合もあります。自己判断での中止は危険ですので、必ず医師と相談してください。

Q3: 家庭血圧測定のコツは？
A: 以下のポイントを守って測定してください：

   ・朝は起床後1時間以内、排尿後
   ・夜は就寝前
   ・座って1-2分安静にしてから測定
   ・カフェインやアルコール摂取後は避ける
   ・同じ時間帯に測定する


Q4: 若い人でも高血圧になりますか？
A: はい。近年、生活習慣の変化により若年性高血圧が増加しています。家族歴、肥満、塩分の過剰摂取、運動不足などが主な原因です。睡眠時無呼吸症候群が原因となっていることもあります。当院では睡眠時無呼吸症候群の検査も行っておりますのでご相談ください。

Q5: 高血圧の合併症にはどのようなものがありますか？
A: 高血圧により以下のような合併症のリスクが高まります：

    ・脳卒中（脳梗塞、脳出血）
    ・心疾患（心筋梗塞、心不全）
    ・腎疾患（腎硬化症）
    ・大動脈瘤
    ・眼底出血